吾唯知足

占術愛好家のノート、チラ裏。よそ様にお見せするほどのもんじゃないかも。。

 更新が滞っているが、占いから離れている訳ではなく、むしろ逆で、ここ数日間、占術的にはとても面白い日々を過ごしている。更新が滞っているのは考えが纏まらないためだ。なんについての考えかというとズバリ「直感」だ。卜のみならず占術一般は直感に負うところが大きいのではないかと思い始めている。巷間、占者を直感タイプ(霊感タイプ?)と理論タイプに分けて論じることがあるようだが、自分の言う直感は理論の対義語としての直感ではない。もっとこう、人間生活に根ざした、誰でも少なからず利用している、ごく自然なものだ。で、この辺りのことがどうも上手く論じられない。

 最近、タロットやルーンで遊ぶことが増えた。そうしてタロットの実占から得たデータを分析し、それを易占と比較してみると、なかなか面白い。分占、象の推しかた、義理とカードの定義の比較など、易占だけやっていたのでは到底分からなかったことが次々と浮き彫りになって、ほー、とか、へー、とか、初めて都会の博物館に入ったおのぼりさんのような感嘆を洩らしてばかりいる。

 こうしてタロットと戯れつつ周易を振り返ってみると、周易はむしろ哲学面で秀でており、必ずしも占に適した術ではないのかなと感じざるを得ない。むろんこれは悪い意味ではない。ダンベル、あるいはバーベルのようなものだ。占者に負荷をかけ、直感に耳を傾ける基礎力の生長を促すために、敢えて切れ味を鈍らせてあるんじゃないかという気がする。その目指すところは恐らく荀子の言う、よく易をおさむる者は占わずの境地だろう。易は直感の成長を促す亀仙人の甲羅であると同時に、直感に耳を傾けることを援ける補聴器なのだと思う。この点、タロットは占者に負荷をかけるどころか鋭敏に過ぎるし、補聴器の音量設定も少々バカになっているところがある。人によっては象が余りに生々しく不気味に感じられ、扱いにくかったりするのだと思う。子供が剃刀をもてあまして手を怪我するようなものだ。

 手っ取り早く相談者に当たってるー当たってるー言われたいのならタロットは素晴らしい占術だが、あらゆる卜に通用する「基礎体力」みたいなものをじっくり身につけたいのなら、恐らく周易は最良の選択肢のひとつだろう。ともあれ、周易の扱いに慣れた人なら、タロットやルーンの扱い方というか、要領も、比較的スムーズに把握できるんじゃないかと思う。(九星系でない五行系の卜の要領はまた別かもしれない)

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 いろいろ言いましたがタロットもルーンも周易も三者三様でいい占術だと思います。でもなんだかんだ周易に戻っていくんだろうなあ。

  Sandi Thom - I Wish I Was A Punk Rocker (Official Video)
  https://youtu.be/tLyw7jytykE

 自分の祖父母の家には木彫りの熊の置物があった。いかにも獰猛そうな奴で、牙を立ててシャケを咥え、あの特徴的な丸い小さな目でこちらを睨んでいる。祖父母は不和で、よく怒鳴りあいの喧嘩をしていたのが記憶に残っている。

 木彫りの熊は土産物として有名だが、それほど由緒の古いものではないらしい。明治あたりに欧州に旅行したひとが、むこうの熊の人形を参考にして始めたというが、むこうのはサーカスで芸をするものだったり、あるいは小熊ばかりで、愛玩の意味が強く、いまにも人に襲い掛かりそうな粗野なものはほとんどないのではないか。

 ああいう獰猛そうな置物をテレビの下に置いて、毎日無意識のうちに視野に入れていれば、気持ちが殺伐としてきても不思議ではない。

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 伯父の家の廊下には首からうえの鹿の剥製が掛けてあった。あるいは埋め込まれてたのかもしれない。ともかく、くわっと枝をひろげる立派な角が印象に残っている。よく知らないが、たぶん猟銃で撃たれた牡鹿だろうと思う。

 子供心に、不気味だなと思って見上げたものだった。恨めしげに見えないこともない。その伯父は事業をやっていてそこそこ儲かっていたらしいが、体を壊してしばらく休み、復帰してみると、部下に裏切られて事業を乗っ取られてしまっていたそうだ。伯父は悪気はないのかもしれないが目下の人間をからかうのが好きで、今思えばその方面から反感を持たれていても不思議ではなかった。

 その話が、どうも、恨めしげな鹿の飾りものと重なって思い出される。

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 鹿も熊もありがちな置物ではあるが、ああいうものを自分のほうに向けて置くというのもどうなのか。風水では建物の角がこちらを向いているのさえ嫌うというのに、牙を剥く熊などは明らかにその上を行っている。これは煞に当たるんではないか。また風水を論じるまでもなく、イメージ的によくないだろう。そもそも獰猛そうな置物の類は魔除け厄除けとして玄関や門前などに外向きにして置くのが本来ではないか。

 まして鹿の首の剥製はさすがに無神経だ。趣味が悪い。よほど権勢のある人なら、これを見て自らの勢いや支配力に想いを馳せるということもあるだろうが、たかが中小企業の社長ごときがあんなものを自宅に掛けるのはちょっと分不相応な気がする。ああいうのを喜ぶような人間が運を逃すのも当然といえば当然だろう。

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 巒頭理気を論じる以前のことって、けっこうありますよね。

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 つまらん話をしました。お耳なおしに一曲どうぞー。

  「Sheryl Crow - Everyday Is A Winding Road 」
  https://youtu.be/khrx-zrG460

 毎度感心するが、ウィキペディアの占術関係一般の記述はじつに素晴らしく、タロットもその例に洩れない。下手なテキストよりよほど要領を得ているのではないか。ただ生憎ページが分散していて使いにくい。そこで暗記・参照の都合から以下にまとめた。完全私用。


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 段落上から、正位置、逆位置、タロット図解。


0.愚者

 自由、型にはまらない、無邪気、純粋、天真爛漫、可能性、発想力、天才。
 軽率、わがまま、落ちこぼれ、ネガティブ、イライラ、焦り、意気消沈、注意欠陥多動性。
 「夢想・愚行・極端・熱狂」


I.魔術師

 起源、可能性、機会、才能、チャンス、感覚、創造。
 混迷、無気力、スランプ、裏切り、空回り、バイオリズム低下、消極性。
 「意志・手腕・外交」


II.女教皇

 直感、知性、安心、満足、期待、聡明、雰囲気。
 悲観、無気力、無神経、現実逃避、疑心暗鬼。
 「秘密・神秘・英知」


III.女帝

 繁栄、豊穣、母権、愛情、情熱、豊満、包容力、女性的魅力、家庭の形成。
 挫折、軽率、虚栄心、嫉妬、感情的、浪費、情緒不安定、怠惰。
 「実り・行動・月日の長さ・未知なるもの」


IV.皇帝

 支配、安定、成就・達成、男性的、権威、行動力、意思、責任感の強さ。
 未熟、横暴、傲岸不遜、傲慢、勝手、独断的、意志薄弱、無責任。
 「統治・堅固さ・防御・同盟」


V.教皇

 慈悲、連帯・協調性、信頼、尊敬、優しさ、思いやり、自信、法令・規律の遵守。
 守旧性(アンシャン・レジーム)、束縛、躊躇、不信感、独りよがり、逃避、虚栄、怠惰、お節介。
 「信条・社会性・恵みと有徳」


VI.恋人

 誘惑と戦う、自分への信頼、価値観の確立、情熱、共感、選択、絆、深い結びつき、結婚。
 誘惑、不道徳、失恋、空回り、無視、集中力欠如、空虚、結婚生活の破綻。
 「魅力・愛・美」


VII.戦車

 勝利、征服、援軍、行動力、成功、積極力、突進力、開拓精神、独立・解放、体力無限大、負けず嫌い、視野の拡大、ゾーンの発動、優勢。
 暴走、不注意、自分勝手、失敗、独断力、傍若無人、焦り、挫折、イライラ、視野の縮小、好戦的、劣勢。
 「援軍・摂理・勝利・復讐」


VIII.力

 力量の大きさ、強固な意志、不撓不屈、理性、自制、実行力、知恵、勇気、冷静、持久戦、潜在能力の引き出し。
 甘え、引っ込み思案、無気力、人任せ、優柔不断、権勢を振るう。
 「力・勇気・寛大・名誉」


IX.隠者

 経験則、高尚な助言、秘匿、精神、慎重、優等感、思慮深い、思いやり、単独行動、神出鬼没、変幻自在。
 閉鎖性、陰湿、消極的、無計画、誤解、悲観的、邪推、劣等感。
 「深慮・忠告を受ける・崩壊」


X.運命の輪

 転換点、幸運の到来、チャンス、変化、結果、出会い、解決、定められた運命。
 情勢の急激な悪化、別れ、すれ違い、降格、アクシデントの到来。
 「幸運・転機・向上」


XI.正義

 公正・公平、善行、均衡、誠意、善意、両立。
 不正、不公平、偏向、不均衡、一方通行、被告の立場に置かれる。
 「平等・正しさ・行政・正当な判決」


XII.吊るされた男

 修行、忍耐、奉仕、努力、試練、着実、抑制、妥協。
 徒労、痩せ我慢、投げやり、自暴自棄、欲望に負ける。
 「英知・慎重・試練・直観」


XIII.死神

 停止、終末、破滅、離散、終局、清算、決着、死の予兆、終焉、消滅、全滅、満身創痍、ゲームオーバー、バッドエンディング、死屍累々、風前の灯。
 再スタート、新展開、上昇、挫折から立ち直る、再生、起死回生、名誉挽回、汚名返上、コンティニュー。
 「停止・損失・死と再生」


XIV.節制

 調和、自制、節度、献身。
 浪費、消耗、生活の乱れ。
 「調整・中庸・倹約・管理」


XV.悪魔

 裏切り、拘束、堕落、束縛、誘惑、悪循環、嗜虐的、破天荒、憎悪、嫉妬心、憎しみ、恨み、根に持つ、 憤怒、破滅。
 回復、覚醒、新たな出会い、リセット、生真面目。
 「暴力・激烈・前もって定められ動かせぬもの・黒魔術」


XVI.塔

 崩壊、災害、悲劇、悲惨、惨事、惨劇、凄惨、戦意喪失、記憶喪失、被害妄想、トラウマ、踏んだり蹴ったり、自己破壊、洗脳、メンタルの破綻、風前の灯、意識過剰、過剰な反応。
 緊迫、突然のアクシデント、誤解、不幸、無念、屈辱、天変地異。
 「悲嘆・災難・不名誉・転落」


XVII.星

 希望、ひらめき、願いが叶う。
 失望、絶望、無気力、高望み、見損ない。
 「希望と明るい見通し・瞑想・霊感・放棄」


XVIII.月

 不安定、幻惑、現実逃避、潜在する危険、欺瞞、幻滅、猶予ない選択、踏んだり蹴ったり、洗脳、トラウマ、フラッシュバック。
 失敗にならない過ち、過去からの脱却、徐々に好転、(漠然とした)未来への希望、優れた直感。
 「隠れた敵・幻想・欺瞞・失敗」


XIX.太陽

 成功、誕生、祝福、約束された将来。
 不調、落胆、衰退、堕胎・流産。
 「物質的な幸福・幸運な結婚・満足」


XX.審判

 復活、結果、改善、覚醒、発展、敗者復活。
 悔恨、行き詰まり、悪い報せ、再起不能。
 「復活・位置の変化・更新・結果」


XXI.世界

 成就、完成、完全、総合、完遂、完璧、攻略、優勝、パーフェクト、コングラッチュレーションズ、グッドエンディング、完全制覇、完全攻略、正確無比、永遠不滅。
 衰退、堕落、低迷、未完成、臨界点、調和の崩壊。
 「完成・約束された成功・旅」


ワンドのエース 創造力、出発点。
ワンドの2 財産、荘厳さ、領主。
ワンドの3 確立された力、交易、ビジネス上の協力。
ワンドの4 仕事の完成、休息、平和。
ワンドの5 熱心な競争、スポーツ。
ワンドの6 勝利者、大ニュースの到着、吉報。
ワンドの7 勇気、ディスカッション、交渉、克己心。
ワンドの8 活動性、素早さ。
ワンドの9 抑圧された状況における強さ、警戒。
ワンドの10 抑圧、多すぎる財産、重圧。

ワンドのペイジ 若い男性、忠実、外交使節、郵便。
ワンドのナイト 出発、親しみやすい若者。
ワンドのクイーン 田舎の女性、親しみやすく貞淑、尊敬できる。
ワンドのキング 田舎の男性、正直、良心的。


カップのエース 喜び、満足。
カップの2 愛、友情、一致。
カップの3 豊か、幸福、成就、治癒。
カップの4 倦怠、飽食、混ぜ合わされた快楽。
カップの5 損失、期待したほどではない遺産。
カップの6 過去を振り返る、幸福、楽しみ。
カップの7 幻想、ある程度の成功(ただし永続的なものではない)。
カップの8 成功の放棄、謙遜、現実逃避。
カップの9 物質的安寧、満足。
カップの10 満足、人間愛と友情の完全さ、幸福な家庭。

カップのペイジ 勉強熱心な若者、熟考。
カップのナイト 到着、発展、提案、鼓舞。
カップのクイーン 善良で公正な女性、幸福、叡智。
カップのキング 公正な男性、創造的知性。


ソードのエース 力の勝利、愛や憎しみにおける大きな力。
ソードの2 均衡、条件付きの調和。
ソードの3 撤退、断絶、悲しみ、未熟。
ソードの4 退却、隠遁、墓、棺。
ソードの5 堕落、廃止、損失、荒廃。
ソードの6 仕事をやりこなす、仲介者、得策。
ソードの7 企画、計画。
ソードの8 拘束された力、非難、悪いニュース。
ソードの9 失望、幻滅。
ソードの10 荒廃、苦痛。

ソードのペイジ 監視、警戒、スパイ、試験。
ソードのナイト 勇ましさ、激怒。
ソードのクイーン 貞淑で悲しみ多き女性、未亡人、喪失。
ソードのキング 裁判官、正義、権威、命令。


コインのエース 完全な満足、金。
コインの2 陽気さ、文書によるニュース・メッセージ、調整する。
コインの3 技芸、取引、熟練工。
コインの4 所有の保証、自ら所有するものへの執着、贈り物。
コインの5 物質的な面でのトラブル、貧困。
コインの6 成功、贈り物、慈善。
コインの7 金銭、ビジネス、交易。
コインの8 職人気質、準備。
コインの9 物質的な豊かさ、達成。
コインの10 利益、財産 家族、一族の繁栄。

コインのペイジ 精励勤勉、学生。
コインのナイト 有用、財産、責任、廉直。
コインのクイーン 富、寛大、安全。
コインのキング 実際的な知性、ビジネス、成功。


(出典・ウィキペディア、2017年08月05日時点)

 自分は大六壬をするときは実際の時間から占時を取らず、骰子を投げて決めている。これは練習占をよくやる都合から来たものだ。大抵おなじ時間帯に占をすることになるので、天盤と地盤の関係が固定されてしまう。それで毎日反吟伏吟が続いたり、ということになり、結果うまく機が取れない。そこで骰子を投げるようにしてみたが、案外ちゃんとした課式が出てくれた。(と、自分は思っている)。それで今は骰子を投げてばかりいる。

 金口訣でもおなじ問題が起こる。とくに連続で占うとき都合がわるい。これには次客法というのがあって、まえの課式の干から干を割り振り直したり、十二天将をひとつ進めたり、将神を前三後五に交互に動かしたりする。あるいは、時支ではなく日支のうえに月将をもってきたりして盤をつくる。しかし、いろいろやったがどうも今ひとつ使い勝手が悪い。そこで地分とは別に占時を骰子を投げて取るようにしたところ、案外ちゃんとした結果になってくれた。

 で、リアル占時を取らないとなると、貴人を起こす場所と順逆をどうするかの問題が出てくる。自分は骰子をもって占時を決める場合、大六壬では尋常に骰子時間を基準にして、酉から寅までは夜貴人、卯から申までは昼貴人としている。しかし金口訣では太陽が出ているか出ていないか、日が差しているか差していないか、表を見てモノに日影が出来ているかいないかを見て決めている。いくら真昼間でも雨や曇りなら夜貴人だ。

  ***

 大六壬では月将というのがかなり決定的な要素で、三伝にこれを見れば無条件に吉とできるほどの威力がある。また金口訣では、用爻に占時を得ると非常によい。テキストには、その強運は短時間しか続かないとあるが、自分が占った限りではそうではなかった。大六壬における月将のようなものと感じた。

 考えてみれば、盤を作るとき、占時のうえに月将を持ってくることになるので、必然的に占時の上は月将になり、また月将の下は占時になる。ここから金口訣では占時が月将の役目を担うことになったのかもしれない。というのも、大六壬では天盤を論じるが、金口訣では地盤支の周辺をもって占う。

 とすれば、、金口訣で占時を骰子から取った場合、リアル占時ではなく月将の地盤支としての擬似占時に験が移ることになるのだろうか。実験の結果を見守りたい。(同日追記:今のところリアル占時が正しいという結果になっている。もう少しサンプルを集めたい)

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 で、大六壬と金口訣の方式の違いからくる違和感の問題は解決したのかって? しましたよ。近代以降の大六壬は古い大六壬から派生したもの(つまり別の占術)と考える。いっぽう金口訣も古い大六壬から派生したもので、これは地盤支を論じるもの(だから大六壬では日干支の旬に合わせて十二支に干を振るが、金口訣では時支に合わせて干を振る)。よくよく考えれば何ら不自然不一致はない。

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 旧式の大六壬はなぜスタイルを変えなければならなかったのか。歳差運動からくるズレもあるんだろうけど、あらゆる占術とおなじように少数の達人が掘り下げたものをテキストに残す際、属人性と普遍性のあいだを行ったり来たりすることになり、それが自然篩のようになって使える要素と使えない要素が選り分けられ、洗練されていったのだろう。断易にもそのような近代化の洗礼選別の時期があった。

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 理屈っぽい話ばかりなのでたまにはサッパリとした音楽動画でも貼りたいんだけど貼ると重くなるんでリンクで。

  「Jamiroquai - Stillness in Time」
  https://youtu.be/Nb6EFh8HlV4

 坤。元亨。利牝馬之貞。君子有攸往、先迷後得主。利西南得朋、東北喪朋。安貞吉。
 坤六五。黄裳、元吉。象曰。黄裳元吉、文在中也。

 昭公十二年。南蒯という人物が反乱を企て、筮して坤の五爻変を得た。南蒯はこれを吉として喜んだが、子服恵伯という人物は要するに坤の義に悖るので吉にならないと断じた。果たして反乱の試みは失敗した。南蒯はのちに亡命先で反逆者めと罵られることになる。

 いっぽう、漢代の話だが、太史が宮中に上がったとある少女のことを占って坤の五爻変を得た。亀卜も併せて用いたようだが、いずれにしてもこれを吉と断じた。果たしてこの少女は後に皇帝の妃となった。

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 旅卦の卦辞には「旅貞吉」とある。明夷卦の卦辞には「利艱貞」とあり、夜の商売に吉とされる。要するに易にはテーマに合う卦が立つこと自体をもって吉とする考えがある。その裏返しとして、テーマに合わない卦を見ると凶に終るケースが多い。

 不応を論じる際、注意しなければならないのはこの点だ。争いごとを占って家人、兌、比などを得た場合、争わず和したほうがよいという風にも読める。つまり、争って決着をつければ凶を見るということが言外に示されていると取ることもできる。

 ややこしい問題、そう簡単にはいかないであろうことを占い、やたらめでたい辞を得たときには注意を要する。むろんそのまま素直に取ってよい場合もあるが、突飛な感じがするほど佳い爻を得たときには、大抵尋常に凶で終る。厄介ごとを占うなら、相応に厄介であることが織り込まれている爻を得たほうが、かえって吉と取りやすい。奇跡的な事が起こって万事が逆転するなど、そうあるものではないのだから。(裏返すと、流動的なことを占って突飛もない爻を得たときはガチの可能性もあると考えなければならない、ということになるだろう)

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 世事に慣れた人は婉曲な物言いをすることがある。京都では客に帰って欲しいとき茶漬けを出すという。ホストとして最低限の持て成しを済ませたのだから、そろそろお帰り下さいな、それにね、いくら鈍そうなアナタでも、私がこういうやり方をする意味くらいおわかりでしょ、私怒ってるんですよ! ということだろう。実際ほんとうに茶漬けが出てくるということもないのだろうが(あったら笑うしかない)、ともかく、周易にもそういう迂遠なところがある。聞く耳があるならお聞きなさい、なければ聞かなくても結構、あなたのお好きになさい、というような、ある意味お上品な感覚を持っている。中国四千年の歴史に根ざす伝統の術だけに、世間のオカン衆とは少し違うようだ。

 一応言っておくと、易における婉曲さというのは、茶漬けを出す京都人のそれとは違って、格好や体裁のためのものではない。ずけずけモノを言っても仕方ないということを踏まえてのことではないかと思う。

 それから表現上の制約からくる面もあるだろう。自由に言葉をやり取りできるのならストレートに言えばいいが、易占には爻辞・象のバリエーション上の制約があり、そのうえ偶然性と確率の問題がある。そのしわ寄せが、婉曲迂遠の表現となっているのかもしれない。

  ***

 いずれにせよ、卦を見て易神側のご都合を察して差し上げるのも、占者の務めではないだろうか。

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